「おいしい」という感じ方は人によって様々ですが、僕たちは「おいしい」の定義を以下のように定めました。
一般的にスーパーさんなどで売られているお野菜は農薬や化学肥料を使って栽培されています。農薬と化学肥料を使うと人間の都合でお野菜の生産量を安定しやすくなり、害虫から守る事もできます。さらに農薬はお野菜の害虫だけではなく、土の中の微生物までもやっつけてくれます。肥料を与えられることが悪いのではなく、たくさんの量を与える事で、お野菜を太らせ過ぎる事が悪い結果に繋がります。
そのようなお野菜たちはあらゆるものから守られて成長するので自分で強さを引き出す必要がなく、どちらかと言うと軟弱です。軟弱な上に悪い結果に繋がる事をされて成長すれば、おかしなもののおかげで身なりは整っていても中身が伴わないお野菜になってしまう可能性が高いです。
では、反対に農薬と過剰な量の肥料を使わないとどうなるのか?まず、人間の都合による栽培というよりは季節に見合った「旬」のものしか栽培されません。次に虫があまり寄ってきません。それは過剰な養分がなくお野菜から強い臭いを発生しないおかげで虫が寄って来にくいからです。土も微生物がいっぱいだから活性化した元気な土になります。元気な土は大地の恵みをそのままお野菜に送ることができます。
生産者さんによっては最低限の量の有機質肥料を使い、お野菜のバランスを整えることもあります。有機質の肥料は、お野菜にも土にも優しく、それぞれの成長を助けてくれます。そのようなお野菜たちは生産者さんたちの愛情や努力や工夫に守られて成長し、さらに太陽と雨と大地の力を受け、どんどんと自分で強さを引き出していきます。
そのように栽培されたお野菜たちは形がバラバラでも中身にたくさんの自力が詰まっているのです。それは食物が地球に生まれた食物として自然に作り出された環境の中で健全に育ったという証です。つまり「自然の恵み」がたくさん詰まっているという事です。自然から得た恵みをそのままにいただく。僕はそれこそが食の醍醐味であり、本質だと思います。
僕たちは決して農薬や化学肥料で栽培されたお野菜たちを否定しません。極少量の農薬や肥料を使い、とてもおいしいお野菜を作られる生産者さんを知っています。どのようなお野菜を選ぶかと言う権利はお客様にあり、それをいくらで買うのかもお客様が決めることです。ただ、子をもつ親として、子どもの成長を見守るべき立場で子どもたちがこのような「おいしい」お野菜を食べた時の素直な反応に嬉しくなります。この仕事に携わるようになり、これまであまりお野菜に興味のなかった3歳になったばかりの娘が「おやさい おかわり~!」と言うようになった事がとても嬉しかったです。